栞いろは歌  禅のことをもっと…

賓主歴然(ひんじゅれきねん)

臨黄ネット栞「ひ」 賓主歴然(ひんじゅれきねん)

賓とは賓客の事、主とは亭主の事、見る主観と見られる客観、即ち、自己と自己の前に拡がる万物の事です。禅の悟りは自己と万物と一体同根の消息です。その消息を「自己」の立場より見ればすべて一味平等、差別がありません。賓主無しの端的です。また、万物の立場より見れば、万物は各々個性を持ち、男は男、女は女、老は老、幼は幼、大は大、小は小と、それぞれ独立して差別歴然としています。賓主歴然の消息です。しかも、自己と万物は一体同根ですから、平等と差別は表裏一体にして、別者ではありません。平等でありながら差別があり、差別でありながら平等である。即ち、平等即差別、差別即平等の世界です。

《原典・臨済録/引用・細川景一著『枯木再び花を生ず』(禅文化研究所)より》

写真 紫陽花の中で坐禅する雨蛙