栞いろは歌  禅のことをもっと…

南山雲北山雨(なんざんはくもほくさんはあめ)


靴を買うのには、足を測り、帽子を買うのには、頭の寸法を測らねば駄目だ。帽子を買うのに頭を測らなかったら、大きかったり小さかったり、似合いの帽子を買うわけにはいかんであろう。人を見て法を説けと言うのである。風を看て帆を使う。帆前船で揚子江を上り下りするのでも、風の方向に向かって帆を使わなければ、上るつもりがかえって下ってしまうことになる。人を見て法を説き、場所を見て挨拶がなければならん。雪竇が、「南山は雲、北山は雨」とうたわれたのは、まさに帽を買うに頭を相し、風を看て帆を使うというものであろう。

《原典・碧巌録/引用・山田無文著「無文全集」第 四巻『碧巌録W』(禅文化研究所)より》

写真 雲水の托鉢